WMSが普及しなかった理由?

基盤地図情報25000 WMS配信サービスがプチぶれいく中である。
Tagchan's BlogさんやMAPconcierge Blog.さんでも取り上げられている。

元データが元データなので,さすがに「オープン」なデータとはいかないけど,十分に使い勝手の良いデータだと思う。では,日本国内でWMSを使った情報発信が初めてかというとそうでもなく,最大手さんのgeography network japanなんかでも,結構なデータが提供されている。

じゃあ,なんで普及しなかったのかと,いう点を考えないといけない。
一つは,大手さんが自分の所のソフト以外でも使えるということを,ちゃんといわなかった点。短期的に見るとそれも正しいんだろうけど,中・長期的に見ると「業界」全体でかくならないと,決まったサイズのパイの取り合いになるのだから,最終的にはじり貧である。最大手さんだけに,パイ自体が大きくなる努力とか,視点がほしいもんである。
もう一つは,「データはローカルにあるもの」というレガシーなGIS屋の迷信。必要なときに,必要なだけデータを得られればいいはずなのだが,レガシーなGIS屋の多くはそういう行動原理ではなく,「どれだけデータをため込めるか」が行動の基準になっているようにも思える。よって,オンデマンド的なWMSはなじまなかったのかも知れない。

ただ,一度ローカルに確保できてしまえば,少なくともそのデータで何かはできると考えてしまう自分も,そういう旧い人間なんだろうけどね(汗


さて,これからを考えたとき。
実はWMS地理情報共用Webシステム 標準インタフェースガイドラインという形で,空間情報を共有するための共通インターフェイスとして位置づけられている。文面のままに捉えるなら,今後,公開される地理空間情報は,全てWMSでも提供されてめでたしめでたし,ということになるわけだが。実際には,そう美味しい話はない。
ここでいわれているWMSWMS 1.3.0であり,OGCやISOの標準としても認められたものになる。
対して,現在標準的に使われているWMSは,WMS 1.1.1である。こちらは,OGCの標準として認められたものである。

問題なのは,WMS 1.1.1に対応しているクライアントだからといって,WMS 1.3.0に対応しているわけではないという点。正確な言い方ではないかも知れないが,WMS 1.3.0とWMS 1.1.1は互換性がない,ともいえる。

そうすると,「WMSは標準サービスだから,いろいろなところで使えますよ」といわれて使おうと思った人が,あるところでは使えて,あるところでは使えない,っつーことにもなりかねないわけで。
というか,私自身も国土情報ウェブマッピングシステムを使おうとして,WMS 1.1.1 で使えなくていろいろ調べて気付いたわけでして。
そうすると,この違いが「WMS使えない(´・ω・`)」という評価に繋がるのではないかと,ちょっと怖かったりします。結果として,WMSが普及しないと,それはそれで困るかなぁ,と。


ただし,ここには「業界標準」と「国際標準」の問題もあったりして。
WMS 1.3.0 はISOの標準なのでれっきとした「国際標準」であるのに対して,WMS 1.1.1 はあくまでOGCの標準なので「業界標準」でしかないということもできる。
共にオープンな標準であるとはいえ,WMS 1.3.0 の方がオーソライズされている,ということもできるんだよなぁ。
その辺はこう,なんつーか,感情的な部分も含めて,複雑なんだよなぁ,としておきます。